エジプトの考古学博物館⑥香油ライセンス取得への「アストロジーの旅」【旅する神様27】


カイロの喧騒のなか、タハリル広場にどっしりと鎮座するサーモンピンクの建物。
1902年に開館したエジプト考古学博物館(旧館)は、通称「赤い宮殿」とも呼ばれるエジプト学の聖地です。

2026年の現在も変わらず開館しており、観光地として訪れることが可能です。

ギザのピラミッド近くに「大エジプト博物館(GEM)」が開館したことで、展示内容や役割に変化はありましたが、旧館も引き続き重要な役割を担っています。

一歩足を踏み入れれば、そこは数千年前の時間がそのまま凝縮された空間。今回は、展示された至宝たちを通じて、古代エジプト人が私たちに遺した「生きる知恵」を紐解いていきましょう。


1,ファラオの威厳 —— 石に刻まれた「神に選ばれし知性」

まず迎えてくれるのは、時代を築いた王(ファラオ)たちの圧倒的な存在感です。

  • 再生のシンボル博物館のロゴにもなっているスカラベ(フンコロガシ)
    糞を転がす姿を太陽の運行に見立てたこの小さな虫は、自己を変革し、未来を切り拓く「再生」の象徴です。
    旅の始まりにふさわしい、ポジティブなエネルギーを感じますね。
  • 愛と権力の共存 アメンホテプ3世とティイ王妃の巨像
    注目すべきは、夫婦が全く同じサイズで彫られていること。
    これは当時の常識を覆すもので、ティイ王妃がいかに強い権力と王からの深い愛を持っていたかの証です。
  • 神に守られしリーダーカフラー王座像を横から覗くと、王の後頭部を包み込むように隼(ホルス神)が翼を広げています。これは「神に選ばれし知性」の象徴。真のリーダーは常に高潔な視点に守られている、というメッセージが伝わってきます。
  • 生きている瞳ラーホテプとノフレト夫妻像
    4600年以上前につくられたとは思えないほど、水晶の瞳がキラリと光ります。
    あまりのリアリティに、発掘当時は作業員が驚いて逃げ出したという逸話も納得の迫力です。

「若さと活力」の一歩王の立像の多くは、左足を一歩前に踏み出しています。
これは心臓(意志)がある左側を前に出すことで、生涯現役で歩み続けるという「若さと活力」のポーズ。
現代の私たちにも通じる、力強いセルフプロデュースですね。


(浮き彫り/レリーフ): ファラオが敵の髪を掴んで打ち据える「敵を撃つ王」の伝統的な構図が描かれています。

2,死後の世界への旅 —— 「再生」という名のプロセス

古代エジプト人にとって「死」は終わりではありません。
それは、より輝かしい場所へ行くための「通過点」でした。

守護神と導き

漆黒の体を持つアヌビス神は、迷える魂を冥界へと導くエスコート役。



また、メンチュヘテプ2世像の肌が黒いのは、ナイルの肥沃な土、つまり「復活」を意味しています。
彼らにとって「黒」は、絶望ではなく希望の色だったのです。

魂の「家」と「地図」

  • 彩飾木製棺: 表面を埋め尽くすヒエログリフは、いわば楽園へ行くための「魔法のパスワード」
  • 石棺の内部 驚くことに、棺の内側には「来世で食べるものリスト」や呪文がびっしり。
    死者が向こう側でひもじい思いをしないようにという、切実で優しい配慮です。

科学と精神の融合

高度な防腐処理(ミイラ作り)には、ナトロンという塩が使われました。
ただ祈るだけでなく、「科学的な保存技術」を駆使して永遠を形にしようとした彼らの情熱には脱帽します。


3,日常の芸術と黄金の至宝

神々しい世界だけでなく、当時の人々の豊かな息遣いも至るところに感じられます。

  • 古代エジプトのモナ・リザ「メドゥームのガチョウ」
    約4600年前のフレスコ画ですが、羽の一枚一枚まで驚くほど写実的。当時の豊かな自然環境が目に浮かびます。
  • エリートのプライド「座る書記座像」。あぐらをかき、パピルスを広げる姿。
    少しふっくらしたお腹は、彼が肉体労働とは無縁な高い地位にいたことを示すステータスシンボルです。

4,ツタンカーメン王の遺物(現在はGEMへ移設)

これらはおそらく今回の旅の目玉だったはずですが、現在はすべて大エジプト博物館(GEM)に移動しています。

  • (カノポス厨子): ツタンカーメンの臓器を納めた器を保護するための、金箔が貼られた美しい厨子です。
    四方を守護女神(セルケトなど)が囲んでいるのが特徴です。
  • (金箔の儀式用盾): 王が敵を打ち倒す姿などが描かれた、黄金に輝く盾です。
  • 黄金に秘められた親愛 ツタンカーメンの黄金の玉座
    まばゆい黄金のなか、王妃が王に香油を塗る姿が描かれています。
    太陽神の光線が二人を包み込むこのシーンは、王家の人間味あふれる愛の瞬間を切り取っています。

5, 今と永遠を繋ぐサイクル

この博物館のコレクションを巡って見えてくるのは、古代エジプト人がいかに「今この瞬間(活力ある生)」と「永遠(死後の再生)」を一つのサイクルとして捉えていたかです。

スカラベの小さなエンブレムから、巨大な王の像まで、すべてに「太陽のように沈んではまた昇る」という願いが込められています。
彼らにとって、一生懸命に生きることは、そのまま素晴らしい死後(永遠)を準備することと同義だったのでしょう。

左足を一歩前へ踏み出すファラオのように、私たちも新しい一歩を、力強く踏み出しましょう。

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